About

2013年10月30日水曜日

産総研中国センター(広島)一般公開出展のご報告

 先週末は産総研中国センターの一般公開で液状化の実験やアナグリフ地形図、岩石薄片サンプル、工作コーナーなどの展示を出展しました。
 展示の様子を中國新聞に掲載して頂きましたので、リンクを貼っておきます。何やら私が紙面を飾ってしまってますが、いいのでしょうか・・・。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201310260033.html

 また現地の小学校のオファーで、地質の講義をさせて頂きました。講義では精密立体地質模型を用いた地質図の読み方、プレートの概念、東日本大震災の震源の説明のほか、沈降管を用いた堆積実験や、広島県内で見つかったクジラ化石の解説などを行いました。

 小学校6年生の皆さんが対象でしたが、既に火成岩や堆積岩の分類を熟知しているなど非常にレベルの高い生徒さん達でしたので、こちらも力が入りました。

中国センターには内湾の津波実験を行う大規模な水槽があり、津波シミュレーションの実証などを積極的に行っています。この施設も一般公開されていました。

2013年10月29日火曜日

「量産型筑波山」 続々製造中


 「進撃の筑波山」といった感じでしょうか…。写真で見るとなかなかの迫力です。前々回の記事でお見せした筑波山の原型モデルをシリコンで型取りし、歯科用の精密石膏でコピーしたものです。

 量産型といっても、精度の面で原型モデルに大きく劣るものでは決してありません。双耳峰の構造や筑波台地と桜川低地との高低差など、全て表現できています。11月3日の講演会では、会場の皆様全員にこのモデルをお配りし、観察して頂く予定です。

現在22個製造していますが、歩留まりも発生していますので、もう少し生産を続ける予定です。
模型を使ったバーチャルジオツアーをお楽しみください。

2013年10月21日月曜日

無人航空機(UAV)を用いた高詳細3D地形データの取得


表題の件についての様々な記事や、これまでの開発経緯(=失敗談)をまとめてみました。長文です…。

 UAVとはUnmanned Aerial Vehicle、すなわち無人航空機の略称です。
 UAVの歴史は古く、第一次世界大戦時から開発がスタートしたとの事ですが、現在は官民を問わず広く門戸の開かれた分野となっています。特に21世紀になってからは民生品のラジコンを自律飛行させるキットが販売されました。またホビー分野では、Ar. DroneGALAXY VISITORなどに代表されるような個人ユースの無人機も登場しています。特にAr. Droneは優れた安定性と、タブレットやスマホを用いた手軽な操縦システム、カメラの標準搭載による空撮性能、そしてトイザらスやAmazonで手軽に購入可能という特徴から、本式のUAVに比べれば性能は低いものの、この分野の敷居を一気に押し下げた感があります。

 ラジコンを無人機に改造するキットがまだ一般的でなかった2007年ごろ、無人機を自費開発して阿寒湖の調査に挑んだことがありました。ただし航空機ではなく水上ロボットですので、正確にはUSV (Unmanned Surface Vehicle) に分類される機体でしょうか。2007年秋にはGarmin社製のGPSとレゴマインドストームによる自律誘導が可能な第一世代型USVを、また2008年夏にはイーグル社製のGPS内蔵ソナーを搭載して緯度経度と深度情報が取得できる第二世代型USVを作成し、阿寒湖の詳細な湖底地形データを取得する予定でした。また第二世代型には試験的にワイヤレスカメラを装着し、操縦者が装着したヘッドマウントディスプレイにソナーの情報が表示されるような仕組みも取り付けました。


第一世代型USV、全長約50 cm。
スクリューとファンの両用による推進。
第二世代型USV、全長約60 cm。
上部のカバーを外し、ソナーを露出させた状態。
スクリューによる推進。
第二世代型USVの先端部分。
上部のカバーを付けた状態。カバー上にワイヤレスカメラを搭載。
このカメラでソナーのディスプレイを遠隔表示。

 結果から申し上げますと、第一世代は推進力が圧倒的に不足していたせいで微弱な水流にすら逆らえずに湖面を迷走、第二世代は一定時間測定できたものの、ソナーの重みに耐えきれず船体内部に浸水したのち半壊、そして沈没(その後回収)と散々な末路を辿りましたが、それでも僅かながら地形データを取得する事が出来ました。しかしその後、仕事が忙しくなったこともあってUSVの開発は停滞しております。


 このようなショッパイ失敗談は横に置いておくとして、現在世界中でUAVやドローンを用いた地形取得の試みが進められているので紹介していきます。UAV自体の開発環境が整ったことに加え、UAVで撮影したカメラ画像から精密な三次元モデルを合成するソフトウェアを容易に入手できるようになった事も、この状況に拍車をかけていると思われます。

例えばこちらはスイス連邦工科大学の運用例です。UAVの一種であるドローンを用いて、マッターホルンの精密3Dモデルを作成しています。

この記事だとドローンの性能がよく分かりませんが、下記ITmediaの記事で紹介されているeBeeという機種とほぼ同じものだと思われます。


 またこちらはCADソフトウェアの老舗であるAutodesk社が手掛けた、UAVによる建造物の3Dモデル作成例です。



 国内でも(株)アジア航測や(株)防災技術などが非常に高精度な写真測量による三次元モデルの合成ソフトウェアをリリースしています。こちらもUAVとの親和性は非常に高いと思われます。

 また、地形図の取得とは少し違いますが、伊豆大島の火山活動観測に対してUAVUGV(無人観測車)による観測網を構築する研究も進められています。こちらもUAVを用いた情報収集例の最先端と言えるでしょう。

 なお先述のAr.Droneですが、今年の8月には次世代型のPower Editionなるものがラインナップに加わりました。この製品は飛行時間が従来の12分から36分へと3倍に延長され、更に別売のGPSフライトレコーダーを接続すれば機体の位置がリアルタイムで記録できるほか、指定した目的地点に従って自律飛行を行うことも可能になるそうです。Ar.Droneにはもともと高度センサーが搭載されているので、GPSによる誘導と組み合わせれば疑似的な地形追随飛行 (*1)も可能ということでしょうか。もしこれができれば、品質の一定した画像データを取得しながら飛行する事も容易だと思われます。AR.Drone 2.0 Power Editon の価格は約39000円、GPSフライトレコーダーは別売で約13000円だそうです。操縦範囲が実質50mでカメラの画質も限定的であるなど、本式のUAVと比べれば機能は限られるため写真測量に使用するのはまだ問題があるかも知れませんが、ここまで高機能なものが数万円で販売されているのは驚異的と言うほかありません。こういった民生品のUAVも今後どんどん進化する事でしょう。正しい使われ方がなされることを祈るばかりです…。

 いずれにしても、地形データの取得から立体モデルの作成までの工程を全てDIY (*2)できてしまう時代がもうすぐそこまで来ていると思われます。全国にある各ジオサイトの3Dモデル作成や、個人で発見した露頭のデジタル保存など、挑戦する意義はあるのではないでしょうか。私も久々にロボット開発と地形データの取得作業を再開する予定です。

*1 レーダーによって機体前方の地形を走査しながら、地表面に対して一定の高度(一般に数十メートル)を保ちつつ飛行すること。NOE (Nap Of the Earth)飛行とも呼ばれる。

*2 Do It Yourself、すなわち「自分で作る」の意。日曜大工よりも広い概念かと思われる。起源は意外に古く、第二次大戦後のロンドン復興に関する国民運動とのこと。限られた材料と科学知識で創意工夫を凝らすという意味で、某ドラマの主人公名に由来した「マクガイバリズム」というスラングが上位互換(?)となるケースも。

2013年10月16日水曜日

マイクロ筑波山 Ver. 2

という訳で前回に引き続き、筑波山の小型模型です。
前回の反省点を踏まえ、今回は造型ピッチと素材を改善しました。
素材は従来品より約1.3倍高密度なものに変更し、また工具径も前回のと比較して0.6倍細いものを使用しています(知財の関係上、詳細な説明を割愛しますことをお許しください)。

上の写真がVer. 2、下がVer. 1です。
素材の高密度化に伴って表面が滑らかになり、また等高線のエッジも明瞭になりました。
現在はシリコンで型取りし、石膏による複製を行っています。
とりあえず次回のイベントで来場者の皆さんにお配りしてテスト運用し、感触が良ければ開発を続行する予定です。お楽しみに。




2013年10月9日水曜日

小型精密立体模型の造型~マイクロ筑波山 Ver. 1

今後のイベントで使用するため、小型の精密立体模型の造型テストを行っています。
名付けて「マイクロ筑波山 Ver. 1」です。
まぁマイクロと言うほど小さくはないのですが、手のひらサイズよりも更に小型の、「指先でつまめる」サイズにしてみました。この大きさにした理由いろいろあるのですが、また後日お話します。

寸法は約49×49mmで、縮尺は約1/245000ですが、このスケールでも筑波山の特徴である双耳峰や、山麓斜面堆積物の分布などが観察できます。更に、桜川低地と筑波台地の高低差も十分把握できるのには驚きました。ちなみに高さ方向の強調倍率は1.60倍です。

少し等高線のエッジが緩いのが欠点でしょうか。見た目にもあまりよろしくないため、現在改良版のVer. 2を作成中です。このように改良点が見つかり次第、どんどん試作品を作れるところが三次元造形機の持つ最大の強みと言ってよいでしょう。

次のイベントまでに、Ver. 2を完成させて皆様にお見せしますのでご期待ください。

追記:この2時間後にVer. 2が完成し、現在シリコンで型取を行っています。等高線のエッジが明瞭になり、地形の把握が容易になりました。作業が終わりましたら写真をアップする予定です。

2013年10月8日火曜日

お知らせ:つくばエキスポセンターイベント予約終了

9月30日の記事でお伝えしました下記のイベントについてですが、本日予約者数が定員に達しましたのでお知らせいたします。
http://kasekishonen.blogspot.jp/2013/09/25-at.html

お陰様で、開催一か月前の段階で早くも予約が埋まりました。今から責任の重さをひしひしと感じております。
三次元造形と地質学の両方について講演を行うのは初めての試みです。出来るだけ分かり易く、なおかつ中身のあるイベントにしたいと考えておりますのでぜひよろしくお願い申し上げます。



2013年10月7日月曜日

三次元造形機が体験できる渋谷のFebcafeに行ってきました


 

Febcafe 公式サイト

昨日、上野の科学博物館で行われている深海展の最終日に飛び込み、その後渋谷にあるFebcafeというお店に行ってまいりました。

Febcafeはレーザーカッターを中心とした各種の造型機が設置されているカフェスペースで、データの持ち込みによる立体造型を有料で行うことが可能です。
 最近は普及型の三次元プリンタ"Cube"が体験できる店舗として雑誌等で紹介されることが多いですが、やはりメインとなるのはレーザーカッターによる高精度加工でした。ipadで作成したラインデータを刻印する体験コースもあり、初心者でも気軽に楽しめるようになっています。 Squareリーダーを介したipadでのクレジット払いにも対応していました。また、店内のスクリーンにはレーザーカッターを制御しているCAMソフトウェアの画面がプロジェクターで常に投影されており、処理内容を逐次知ることが出来る仕組みも実用的でした。

上記2つの造型機に加え、Rolandの卓上カッティングマシンも展示されており、またその隣に紙積層による富士山の立体模型が展示されていたのが印象的でした。

普及型の3Dプリンタの成果物も展示されていたのでじっくり観察することが出来ました。精度・寸法安定性とも想像していたよりは高いものの、やはり0.1~0.2mm積層では段々がかなり目立つため、精密立体地質図での導入はもう少し先になりそうです。今後普及が進み、より高精度なものが出てくることを期待したいと思います。

レーザーカッターに関してはほとんど知識がありませんでしたが、精度・静音性ともに素晴らしいものでした。レリーフ調の加工を行うには最高のツールかと思います。

こういった気軽に三次元加工を楽しめる施設がつくばにも出来ればと思います。イベントスペースとしても適したカフェでした。オススメです。今後、都内のもの作り関連施設を何軒か訪ね歩く予定ですので、また機会があればレポートしたいと思います。

2013年10月1日火曜日

地学教材「見たまま砂絵で地質図」シリーズの開発について

  GSJ地質ニュースの9月号が公開されております(https://www.gsj.jp/publications/gcn/)。今号では、今年の初めから開発を進めている児童向けの砂絵教材に関する口絵と解説の記事を2本、書かせて頂きました。砂絵の画像や詳細な利用方法等につきましてはリンク先をご参照ください。
https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol2.no9_259-260.pdf
https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol2.no9_279-281.pdf

簡単にご説明しますと、本教材はシール用紙に筑波山の立体地質図が印刷されており、各岩体部分のシールをそれぞれ用紙から独立して剥がせるようになっています。シールをはがすと下の台紙部分に塗られた糊が露出するため、ここに色砂を撒けば簡単に地質図の砂絵が完成します。さらに地質図の判例部分にも同じように砂を撒けるため、岩体と判例の砂を統一させる事が可能で、地図や地質図の読み方を工作しながら学べるという仕掛けになっています。

砂絵教材の開発は、地質図をいかにわかりやすく立体的なイメージを持って伝えられるか、をテーマに今年の2月からスタートしました。もともと地質標本館のOBの方の発案によるものでしたが、それを私が引き継ぐ形となりました。3月のイベントで使用することが決定していたために時間も少なく、実質的な作業時間が一週間しか取れない状況でした。

私自身、こういった教材の開発というのは初めての経験でして、所内の方々のご意見を頂きながら試行錯誤を繰り返しました。更にこの教材は、シールを剥がす仕組みになっているため、台紙の所々に刃物で薄く切り込みを入れる必要があり、その為の刃物の選定や調整等について、印刷所の方々には大変なお手数をお掛けしました。

砂絵で地質図、というコンセプトが果たして受け入れられるのかどうか非常に不安でしたが、幸いにもエキスポセンターや市内のイベントでは好評で、特につくばフェスティバルでは300部以上が消費されました。この教材は、完成した砂絵を手に実物の筑波山を観察するのが最良の方法なのですが、多くのイベントでは立体条件や天候の関係上それが困難であるため、次善の策として筑波山の精密立体地質模型によるバーチャルジオツアーを行いながら砂絵の砂絵を作っていただいています。

お陰様で続編の製作も決定し、9月に仙台で行われた地質情報展では第2弾となる「蔵王 見たまま砂絵で地質図」が公開されました。こちらも蔵王の精密立体地質模型とセットで出展され、2日間で400部が消費されました。

この教材は各地の博物館やジオパークでのアウトリーチには最適だと考えておりますが、シリーズ化出来るかどうかはまだまだ未知数の状態です。精密立体地質模型によるバーチャルジオツアーと併せて、普及に努めたいと思います。

最後になりましたが、開発にご協力いただいた方々、そして立体地質図の作図に利用した「カシミール3D」の作者であるDAN杉本さんに厚くお礼を申し上げます。

Share

Twitter Delicious Facebook Digg Stumbleupon Favorites More